「スリル」
「ね!ね!いこ!おしゃんぽ!」
「明日じゃ駄目か……めちゃくちゃ眠いんだ……。」
「や!いくもん!」
こんな夜にもちもちの膨れっ面を見せられてもな。
「ね!ニンゲンしゃん!」
「こらこら、引っ張らないの。」
「お!しゃ!ん!ぽー!!」「……わかったよ。」
「そのかわり」「んー?」「大人しくするんだぞ?」「ん!」
わかったのかわかってないのかよく分からん返事だ。
……まさかこんな時間に出かけることになるとは。いや、むしろ人に見られないから好都合か?
どっちだ───「ちょ、止まって!」「えー?」
「いきなり走り出すと危ないだろ?」「んー?」
「そこの角から何かが飛び出してきたらぶつかるかもしれない。だろ?」「ん!ボク、はちらないの!」
聞き分けが良さそうなのが救いか。
「ほら、手を繋ご───って言ってるそばから走るな!」
「んー!」「返事だけは一丁前だな……。」
「おへんじ、じょーず?やたー!」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねて赤信号を渡ろうとする。
思わずかわいい腕を掴んだ。
「ニンゲンしゃ、いたいー!」「危ないだろ!」
「なんでー?」「赤は渡っちゃ駄目だ。青の時に渡ろうな?」
「あおー?⬛︎⬛︎ちゃんのいろににてるねー!」
……全く呑気なやつだ。
「ちょっと今日はもう帰ろうか。」「えー?あしょびたいのにー!」「ニンゲンのルールをもっと知らないといけないから。」
「るーる?てなにー?」「お約束、ってとこかな。」「ん!」
それから……自分にはスリル満点すぎた。
一歩間違えたら事故だし……ついでに言えばあいつに何言われるか分からないからな……。
「じゃー、だっこ!」「はいはい。」こっちの方が安全だ。
……小さな子どもはあったかいな。湯たんぽみたいだ。
安心したのか、もう眠り始めた。
……よっぽど抱っこが好きなんだな。
にしても、親代わりっていうのは大変なことだ。
でも……悪くはない、かも。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
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11/13/2024, 9:50:08 AM