ㅤ待ち合わせは十一時。柔らかな冬陽の差すコーヒーショップに、きみは先に待っていた。窓越しに手を振ったけど、きみは気づかず。一点を見つめるように動かない横顔に、窓を叩く手をそっと引っ込めたあの日。
ㅤお店の中に入ったら、きみはすぐこちらに気づいた。待たせたことを詫びる言葉にも笑顔で応えて。
ㅤあの日を想うとき、いまも心が温かくなる。数日後にはあんなに酷い言葉をぶつけてくるきみだったのに。
ㅤ既に違う場所を見ていたきみの、きりりとした、それでいて温もりさえ感じるような、あの横顔が忘れられない。
『あの日の温もり』
2/28/2025, 4:53:17 PM