昨日見た猫がいなくなっている。
ただそれだけのことなのに、私だけが過去に取り残された気分になった。みれば、ついこの間蕾を付けていた桜の樹に、青々とした葉がたっぷりと実っている。
時間が過ぎるのはあっという間。新しい季節がやってきて、新しいことに慣れて、失敗して、後輩が入ってきて、注意する立場になって。
私という土台はずっと不安定のまま、背伸びして上げた5cmのヒールの踵に靴擦れを抱えたままで。やること成すことはちっとも変わってやしないのに、立場だけが変化して勝手に失望される。
もううんざりと思ったのは何度目だろう。自分よりも後から飛び込んできた稚魚の方が、余程社会の海で泳ぐのが得意らしい。
ああ、熱帯魚。鮮やかな鰭を翻して泳ぐ海の華。
25度で生きる魚に、30度のアスファルトは暑すぎた。
私にあるのはフリルを蓄えたそれではなく、棒のように突っ立った二本の足のみ。
だけれども、曲げるぐらい、休むぐらい、許されてもいいのではないか。ガラスケースに飼われる観賞魚だって、水を選ぶ権利はある。息のしやすい場所を、探しに行きたい。
あの桜が洞になる前までに、きっと生まれ変わろう。
5/22/2023, 1:58:08 PM