ゆかぽんたす

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窓の外の流れる景色を見ながら、今日あったことを思い出していた。久しぶりに食べた母の料理。知らない内についた玄関のスロープ。相変わらず笑ったままの仏壇の父の写真。つい3時間ほど前のことなのにだいぶ前のことのように感じる。特急電車に乗っているから尚更そう思うのかもしれない。時速100キロもの速さで私を故郷から都心部へと連れてゆく。現実へ引き戻すかのように、容赦なく。いつの間にか外の景色は代わり映えのない灰色のビルばかりになっている。あっという間に見慣れた土地に運ばれてしまった。ホームに降り立ち、いつもの改札を抜けたところでポケットのスマホが震えた。
『いつでも帰ってきんさい』
母からのメールだった。私が東京に着く時刻を知っているわけがないのに。それはタイミング良く受信した。たった一言のそれに、私もありがとうと一言だけ返す。顔を上げるともう辺りは夜の帳が下りようとしていた。駅の周辺の街灯がもう明かりを灯している。温かくて柔らかな光。実家の居間の色となんとなく似ていた。私の故郷じゃないのに、むしろ実家から嫌な現実へ引き戻されてきたばかりなのに。その灯りは、どこか私におかえりなさいと言っているように見えた。
明日も頑張ろう。自分なりに。

7/8/2023, 12:20:35 PM