奇麗

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鳥かごがある。

いや、あるのだろう。

右手の感覚を頼りに真っ暗な世界の輪郭をたどる。

ひんやりとしたものが指に触れる。

上へ指をすべらせる。

真っ直ぐだった輪郭が曲線を描き出す。

左手でも触れてみる。

両手を下から上へすべらせる。

曲線を描き終わったところで右手と左手がぶつかった。

やはりこれは鳥かごだろうか。

鳥のさえずりなど聞こえはしなかったが。

だとしたらこれはただのかごだなぁ。

残念。

つまらないことに時間を使ってしまったな〜。

かごを抱いて水浸しの地面に倒れ込み、触れてみる。

冷たくはない。

生ぬるい。

かごに絡みついていた腕を解く。

かごを押しのけて体を起こす。

瞼を上げ、かごの方を見る。

そっちは毒々しい闇が広がっているだけだった。

鳥は入っていたのかなぁ。

仕方がない、確かめに行くか。

あのかごに扉なんかなかったように思えた。

もし入っていたとして

それはもう腐り、骨になり、隙間からこぼれ落ちているだろうが。

少し前まで昨日よりも明るいところを求めていたのに

今の僕にはどちらへ行けば明るいのかもわからない。

だから今日も好奇心に身をゆだねる。

7/25/2023, 11:48:37 AM