透明の糖分

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頭の奥の奥の奥の方にある記憶。

みんなと砂場で遊んでご飯を食べてお絵描きをして、幼稚園児という生き物は疲れを知らないので暇さえあれば外を走り回ったりしている。その日は雨が降っていて私はおんなのこ達の輪に混じっておままごとをしていた。
そんな事を何時間かしていたらいつの間にかお迎えの時間がくる。お母さんと手を繋ぎひとつの傘に一緒に入って帰っていく友だちを室内で眺めていた。
いつの間にかひとりになっていた。

待っても待っても私のお母さんが迎えに来る気配はなく、幼い子供ながら寂しい気持ちを先生に察してほしくなくて暗くてじめじめしたトイレに閉じこもった。目をつぶってお願いした。戻ったらお母さんが来てくれていますように。戻ったらお母さんが来てくれていますように。戻ったらお母さんが来てくれていますように。
雨は嫌い。どろどろじめじめした空気を吸い込んで、寂しい気持ちが大きくなっていく気がするから。このままお母さんが来てくれなかったらどうしよう?

「 」
聴き馴染みのある大好きな人の声が聞こえた。少し遠くの方で、小さいけど、確かに聞こえた。
薄暗いトイレに一粒の涙と寂しい気持ちを捨てて私はその声の方に走っていった。

8/27/2023, 10:33:21 AM