「大好き、好きな色、好きな本、好き嫌い、大好き、好きじゃないのに、大好きな君に。
けっこう『好き』が付くお題多いわな」
「好きだ、ようかん」とか「好きだ要求」とか、そういうハナシも書けそうではある。
某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら、「よ」で始まる言葉をアレコレ考えた。
ネット検索によれば「だよ」で始まる言葉は無い。「好き。だよ◯◯」は書けないということだ。
「ゴールデンとかハスキーとか、人懐っこい動物のハナシを書くなら、『好きだ要求』書けるか」
そういや以前、「愛言葉」なるお題が来て、「愛してると言え」みたいなネタを、考えたことが。
物書きは思い出す。
そういえばこのアプリ、恋愛系のお題も多い。
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前回投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く住んでおります。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、人間の世界を勉強しておるのです。
さて。そんなコンコン子狐、
その日は2番目のお得意様にして、初めての大口顧客、「ここ」ではない別の世界の職場、
「世界線管理局」に、訪問販売の日です。
お餅は1個200円ですが、別の世界への売り込みなので、日本のお金を貰えません。
なので、対価としてキレイなガラス玉、おいしいジャーキー、楽しく10分遊んでもらえる券等々。
物々交換でお餅を売っています。
「こんにちは!こんにちは!」
尻尾をぶんぶん振り倒して、とてとて、ちてちて。
子狐は管理局の、犬耳受付係さんに桜餅を2個、獣人広報部さんにイチゴとあんこのお餅を2個、それから収蔵部のアイコスメにすごく詳しいお得意さんに惣菜お餅とスイーツお餅と以下略、以下略。
「ウカサマのごりやくたっぷり、イナリのキツネのおいしいおもち、いかがですか」
60個くらい用意したお餅のうち50個を、ガッツリ、売り終えました。
「まいど。まいど」
「おいしいよぉ。イチゴ大福、市販のよりおっきいし、あたし、大好きだよぉ」
収蔵部の上客さん、子狐にチップを渡しながら、頭をなでなでしてやりました。
「ミカン餅もなかなか上達したじゃねぇの」
上客の友達さんも、子狐のお餅を食べて上機嫌。
お餅のお代として、ジャーキーをくれました。
残っている「子狐が売り歩いても良い部署」は、法務部たったひとつだけ。
最後の10個を売り切るべく、とってって、ちってって。狐特有の軽い足取りで歩いていきます。
ところでその法務部から、稲荷の狐の本能を刺激する香りがポワポワ、ぽわぽわ。
「んん。おいしそうなにおい」
コンコン子狐は子狐なので、本能を抑えることができません!狐の本能が命じるまま、とたたたた!香りのする部屋に突撃してゆきます。
部屋にはロックがかかっているようですが、
稲荷の狐にロックもセキュリティーも、暗号だって鍵だって、何の意味も持ちません。
尻尾をぶんぶん振り倒して、狐の本能を刺激する香りの発生源を、特定します。
「あれだ!」
それは、宇宙の七色に輝き揺らめく、不思議な不思議な、10個くらいのたこ焼きでした。
「たべたい!たべたいッ!」
あきらかに非現実的で冒涜的、不遜で純粋な不思議たこ焼きでしたが、そのたこ焼きは子狐の魂に、「わたしを食べなさい」と命じておりました。
ああ、ここでダイスですか?
何のスキルで対抗しますか?
「好きだよ」のお題にちなんで、好感度補正?
はい、はい。そういう物語ではありませんね。
失礼しました。
「いただきまーす!!」
がぶがぶがぶ!ちゃむちゃむちゃむ!
コンコン子狐、器に盛られたたこ焼きを、一気に3個4個、胃袋におさめてしまいました!
「おいしい。おいしい」
七色に輝くゲーミングな見た目に反して、たこ焼きの味は至高にして絶品!素晴らしい味と食感。
なにより子狐の本能が、「これを食べなさい」と、「すべて食べなさい」と命じるのです。
「おいしい。おいしい」
きっとこの味、ととさんもかかさんも、好きだよ。
子狐が夢中になってたこ焼きを、がぶがぶがぶ、ちゃむちゃむちゃむ、一心不乱に食しておると、
「あら、ちょっと!どうやって入ったの」
たこ焼きの部屋の主さん、人間くらいの大きさのオネェな宇宙タコが、うにゅうにゅうにゅ!
「まぁー。たこ焼き全部食べちゃって」
部屋のロックを解除して、入ってきて、たこ焼きを食べる子狐に気づいて言いました。
「たこ焼き好きなの?アンタ、もっと食べる?」
「たべる!」
尻尾を高速回転して喜ぶ子狐です。
ところでその子狐、いつの間にか七色に輝いて、ゲーミング子狐が爆誕しておるようですが……?
4/6/2025, 3:40:30 AM