Ryu

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風とともに去ることも出来ず、歩道に立ち尽くしていた。
君からの平手打ち。
僕達の黄金時代は終わってしまったらしい。
こっちはまさに、風と共に去りぬ。
痛む頬に手を当てて、去りゆく君の背中を見つめている。

男と女なんて、うまくいく方がおかしいんだって。
お互いがお互いを求める関係なんて、きっとどこかで軋轢を生むんだって。
そのうち邪魔くさくなる。
どちらかが先に鬱陶しさを感じたら、もう片方もその態度に嫌気が差してくる。
根本が、負けたくない、負けられない関係だからね。

だけど、一方的にビンタされて終わるとは思わなかった。
しかも、こんな公衆の面前で。
僕にだって、恥も外聞もあるってのに。
目の前を、ベビーカーを押した母親が通り過ぎてゆく。
気の毒そうな視線をこちらに向けているような気がしたのは、単なる被害妄想だろうか。

まあ、仕方ない。
頬の痛みは引かないが、ここは潔く身を引くしかないか。
こんな場所でこんな状況にされたら、こっちの愛想も尽きるってもんだ。
気持ちいいくらいに二人の関係を木っ端微塵にしてくれたね。
ありがとう。
最後まで君には感謝しっぱなしだよ。

さてと、何か美味いもんでも食いに行くか。
一人飯だって美味いもんは美味い。
腹いっぱい食って、コンビニでお酒とか買って帰ろう。
気ぃ抜いて観られるB級映画で夜更かしして、涙はすべて、お酒と映画のせいにして。
一人なら、気兼ねなく泣いて好きなだけ飲める。
うん、そうだよ。
心が苦しくて仕方がないんだ。
こんなはずじゃなかったんだけどな。

5/1/2025, 9:46:46 PM