「私…隣のクラスの○○君と付き合ったの…。」
頬を赤く染め、モジモジとしながらN子は私にそう告げた。
「えっ?!○○と付き合ったの?!良かったじゃんN子!前からその人のこと気になっていたんでしょ??」
親友の恋の実りを聞いて私は喜び、N子の肩をバンバン力強く叩く。
「うん…。最近よく話せるようになって…そしたら向こうから…」
「良いねー!青春が、甘酸っぱい青春が今始まろうとしているのか~!!」
「ちよっとー、大袈裟だよ~!」
本人よりも盛大に喜んでいる私に、N子は恥ずかしそうに私をなだめた。
「それで……相談なんだけどさ。」
N子が言いにくそうに本題を出した。付き合い報告に気を取られていたが、N子に呼び足された理由は相談であり、報告ではない。
最初はなんの相談なんだろう、と思っていたが、N子の話を聞いて確信した。これは恋の相談だ。
親友に恋の相談をされる日がくるなんて…胸踊るな~!心の中でそう呟き、私はニヤニヤ笑みを浮かべた。
「私、誰かと付き合うってこと初めてで…何をしたらいいのかわからないの。……だけど、私…彼ともっと交流を深めたいの!そう思って私……」
力強く話したN子だが最後は言い淀み、静寂が流れる。
…正直驚いた。あのN子がここまで本気な意思を見せるなんて、意外である。
だけど、私は親友の志に感銘を受けた同時に少し不安も感じた。
N子は正真正銘無垢な少女…言ってしまえば純粋の化身の様な子であった。そんな子が男子とそういう風に付き合うなんてあまり想像できない。というかあまりしたくない。
だけどそんな親友でも、今は思春期真っ盛りの普通の女子高校生だ。異性との関わって成長していくのが大事でもある。それでも正直…N子にはもう少し純白であって欲しかった。
癒し系キャラが私よりも経験豊富になると考えると、複雑な気持ちになってしまう。だけどこれが彼女が選んだことなら親友の私は応援するまでである。たとえ、段階飛ばしすぎな行動を起こしたとしても……
「……それでね、私!……交換日記から始めようと思うの!!」
さっきまで言い淀んでいたN子が思いきって口を開き、カバンから日記を取り出した。
「………あ、うん、良いと思うよ…。」
「ほんとっ?!……じゃあ、言ってくるね!相談のってくれてありがと!」
「バイバイっ!」と嬉しそうに手を振って走っていった親友の背中を私は見送った。
ああ、神様…。親友がいつまでもこうでありますように…。
私は大事そうに日記を抱える彼女を見て、密かにそう願った。
題名 少女よ、無垢であれ!
5/31/2024, 3:08:50 PM