君と見上げる月…🌙
君と別れてからずっと後悔している。
ベランダから眺める月は綺麗で、隣を見てため息を着く。
寂しいな、こんな綺麗なのに一緒に楽しめる君がいないや。そう苦笑いをこぼす。静かな夜に自分の苦笑いの声が哀れだった。
ふと思った。電話、してみようか。出て、くれるだろうか。着拒されるだろうか。迷惑だと怒られるだろうか。…未練がましいと思われるだろうか。
色んな考えが頭をよぎって電話がかけられない。
もしかしたら、二人で月を見て、笑って、泣いて、なんて些細なことを思い出してくれて、楽しくおしゃべりができるかもしれない。
そんな馬鹿みたいな考えが浮かんで、電話をかけた。
しばらくの機械音の後、『…なに?。』と不機嫌そうな声が聞こえた。
「あ、え、えっと、あの、こ、こんばんは。」
本当に出て貰えるとは思わず、しどろもどろになる。
『…はぁ、何か用?』
「え、えと、あの、」
出て貰えない想定だったので、上手く言葉が出ず、焦ってさらに言葉が出ない。
『なんの用もないなら切るよ。遊びでかけたりしてこないでよ。』
電話の向こう側からはイライラして刺々しい声が聞こえる。 このままじゃ、切られる…! そう思い思わず言ってしまった。
「ま、待って!!」
かなり大きめの声を出してしまい、自分でもびっくりしてしまった。
『うるさいんだけど! 何?! 嫌がらせなの?』
電話の向こう側から怒鳴られる。
「ご、ごめん……。」
見られていないが土下座しながら謝ると、しばらくの沈黙の時間が続いた。しかし、向こうから、ため息が聞こえた。
『……はぁ。何?なんかあったの?』
なにかあったから電話をして慰めてもらおうとしていると察したのか、聞いてきた。
「いや、あの……」
君と復縁したい。
なんて、到底言えそうになく口ごもってしまう。
さらに察してくれたのか、先に話をし始めてくれた。
『付き合ってた時さ、二人でベランダ出て話しながら月、みたよね。』
愛おしむような、懐かしむような、そんな声色で思い出話に花を咲かせようとしてくれる。
だが、僕は
「(あぁ、君にとって僕はもう懐かしい思い出の一部でしかないのか。)」
そう、思った。
それで、なんだか、悲しいと言うより、落ち着いてきた。
『でさ、あんたがさ〜……って聞いてる?』
「うん、聞いてる。ありがとう、落ち着いてきたよ。」
『あっそ。で、なに?』
「もう大丈夫。最後に一言だけいいかな。」
もう自分の声色に迷いはなかった。
電話の向こうから声はしない。僕の言葉を待ってくれているようだ。
「月が綺麗ですね。」
『……え。』
「それだけ。ありがと、じゃあね。」
そう言って切った。
やり切った。 心残りはない……といえば嘘になるが、スッキリした気分だ。やっぱり怖くて直接的には言えなかった。君は知ってるかな。
ふと、スマホを見るとLINEが来ていた。
君からだった。
心臓が ドクン、と音を立てる。
『月はずっと綺麗でしたよ。』
「え。」
スマホを持ったまま時が止まる。もう1件通知が来る。
『あの場所で待ってる。』
きっと僕たちが出会ったあの場所だ。
僕は走り出していた。
9/15/2025, 4:52:30 AM