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青白く輝く、レルム星座の双子星アシルとレシアを、
赤く輝く、ミリアル星座一番の雄々しい星リューナルベルトで身を飾り、
空の頂に灯る、北天のポールステルラを冠に抱き、
南天でただ孤高に輝くフォーマルハウトを、
南の天の仲間の星を裾に散りばめて。

星々を飾る白い衣をまとった
天上の少女ユミルは、
白くまたたき流れるその川に足を浸して歩く。
細い足が歩を進めるたびに
星のかけらは彼女の訪れに
歓喜の声を上げながら足元をころころと流れ、
軽やかな雫はユミルの黄金の鈴をちりちりと鳴らす。

ユミルは創生の詩を歌いながら星の河を渡る。
はるか昔、物心がついた時にいたあの光の中へ向かって。

ユミルの歩いたあとには星々の道が広がり、闇色の空は明かりを得る。
彼女が手に掲げた月鏡の明かりは
星のかけらにまたたきを与え、雲を透かして大地に安らかな光を、東から西へと。

ユミルは目的の場所、太陽の神殿に到着する。
炉の中で灯る太陽のひかりはすっかり弱まり、今にも消えてしまいそう。

ここで一人で生まれ、
親もなく兄弟もなくひとりで育った
天上の少女ユミルは
星々に光を与え、大地に安らかな光を与える。

空での己の使命を成したのち、
最期の使命を果たすためにこの場所に。

星の輝きで身を飾ったユミルは
太陽の炉に身を投じて
新たな太陽になることを全て知りながら。

今にも消えてしまいそうな太陽の炉を見ながら、
ユミルは誰も見ることのない微笑をかすかに浮かべ
ゆっくりと太陽の炉に自ら歩んでいった。
震える足が、足輪の鈴を鳴らし、
シャラシャラ音をたてた。

鈴の音が止まる。
彼女のかすかな呼吸の音が、最期の太陽の光を揺らした。
ユミルは大きく深呼吸をすると数歩。
自ら太陽の炉に身を投じた。
みずからのいのちすべてをかけて。


そして大地は太陽を、太陽の巡りで訪れる月の世界、昼と夜を取り戻した。
太陽という一つの星となったユミルの心は、
救われたのだろうか。
彼女はこの生に満たされていたのだろうか。
それを、この世に生きる大地の民は知る由もない。

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「ねえねえお父さん、どうして太陽はあんなにまぶしいの?」
「それはな……」
父親は子供を膝に抱えると、親から伝え聞いた民話を語り出した。


2025.1.9 お題:星のかけら

テイストを変えてみました。

1/9/2025, 5:57:03 PM