狼月

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お題 / 時を止めて
タイトル / 過去と今、私たちの関係は。

【蘭】
私は、現代では珍しい魔法使いだ。

「時を止めて」そんな言葉を聞けば真っ先に思いつくのはやはり魔法だろう。世間一般的に魔法は空想上のもので、使うことは出来ない。
正直私はその方が幸せなのではないかと思ってしまう。実際に魔法を使える身だからこそなのだろうが、たとえ魔法が使えてたとしても、その楽しさを共有できる人がいなければ意味が無いと思ってしまうからだ。でも、時間が経つにつれ、孤独感は強くなる。だったら、人間と交流すればいいじゃないかと思うかもしれない。だがそれは無理な話である。なぜなら、「人間と魔法使いは一切の接触を禁止されている」からだ。
だからといって森の奥で生きていくなんてのももううんざりしていた。だから人間のふりをして森の外へ出た。人間のふりにも慣れてきた頃、ある一人の人間と出会った。その子は突然「あなた、魔法使いでしょ!」と確信をもったように言ってきた。当然、「違います」と言うしか無かったが、「嘘だよ!だってオーラが人間と違うもの!」と一蹴されてしまった。

「オーラ?ってなんの事?」

別に魔法が使えるからと言って特別なオーラが出たりする訳では無い。見た目は普通の人間と何ら変わらない。

「私ね、オーラが見えるの!」「昔助けてくれた魔法使いの人がくれた特別な力なんだ!」
「魔法使いに助けられた…?」
「そうだよ!」
「私ね、その魔法使いさんをずっと探してるの」

人のオーラが見える魔法…
魔法使いに助けられた…
もしかして…いや、そんなわけない。

「その魔法使いの名前は分からないの?」
「…忘れちゃったの。助けてもらったのも何年も前だしね。」
「だからこうやってオーラで魔法使いを探して声をかけてるんだ。」
「そんな無謀な…」
「それでもいいの…!ただ、昔のお礼を言いたかっただけだから。」

お礼…それだけの為に?お人好し…いや、ここまで来るともうバカだな。

「ん〜…その魔法使い探し、私も手伝ってあげる。」
「へ…?手伝うって、本気…?」
「冗談でこんなこと言わないよ。」
「えっと、自己紹介が遅れちゃったね。」
「私はあなたの言うとおり、魔法使いの蘭(あららぎ)。よろしく。」
「あ、えっと…連理です!こちらこそよろしく!」

さて、手伝うと言ったもののどうするか…

「あ、あのさ…」「ん?なに?」
「手伝ってくれるのも嬉しいんだけど、良ければそれだけじゃなくて普通の友達みたいに一緒に遊んだりしてくれないかな…?」
「普通の、友達…」

突然そんなことを言われたって困ってしまう。この数百年人と全くと言っていいほど関わって来なかったのだ。当然、友達だっていたことは無い。それに、彼女の言う「普通」の友達が分からない…。

「私は友達に向いていないだろうからやめといたら?」
「友達に向いてるも向いていないもないよ!」
「私が友達になりたいの!」
「でも…」
「一緒に遊んで欲しいだけなの…」
「…わかった。でも、期待はしないでね。」

どうしてそこまで私と友達になりたかったのか全く分からない。

それから連理に何度か遊びに誘われた。時には「時間を止める魔法」で時間の流れが止まった世界を2人きりで謳歌したり。連理は私の魔法が全く効かない特異体質の持ち主だった。だからなのか一緒に遊ぶうちに心の開ける唯一の友人になっていた。まさか私にここまで仲良くなる相手がいるとは…。でも、彼女は人間だ。いつかは離れなければいけない。むしろ今すぐにでも。
それが出来ないのは、私の中でもう連理は大切な存在になってしまったからだろう。でも、最近誰かに付けられている気がする。きっと、禁止を破ったことがバレたのだろう。今日、連理に遊びに誘われた。今回で、全て終わりにする。

「あ!蘭(あららぎ)きた!夜遅くにごめんね!」
「それは全然…それよりどこに行くの?」
「…それは、内緒。」

内緒なんて珍しいな…そういえば、魔法使い探し全然してないけど、いいのかな…
どこに行くか分からないし、まだ着かなそう?だし聞いてみるか…

「ねぇ、そういえば魔法使い全然探してないけどいいの?」
「あー…一旦大丈夫かな」
「あんなに探してたのに?」
「蘭(あららぎ)と遊ぶの楽しいし!それに…」
「それに?」
「いや、なんでもない」
「そう…」

探すのよりも、私と遊ぶことを優先?メインは魔法使い探しじゃなかったの…?それにって、何を言いかけたの?
嗚呼、疑問ばかりが頭を支配する。連理といてこんなに不安になったのは久しぶりだ。

「さ、ついたよ!」
「へ?」

気づいたら何処かの屋上に来ていた。気づかない間に階段登ってたのか、怖…

「で、屋上きて何するの?」
「うーん、たまにはこういうのもいいかなって」
「何も屋上じゃなくたって…」
「もー、そんなに屋上嫌?」
「そうじゃないけど…」
「じゃあいいじゃん!」

それから普段はあまりしないような少し真面目な話もした。

「最近、誰かに付けられてる気がするんだ。多分、魔法使いと人間の禁止事項を管理してる系の奴らだと思うんだけど…連理は大丈夫?」
「え、私?私は別にそういう事はなかったと思うけど…」
「よかった。私が連理と出会ったせいで連理にまで被害が出てるんじゃないかと思ってたから…」
「…それでね、大事な話があるんだ。」

連理を巻き込まないための大事な話____。

「話…?」
「うん、私たちもう会うのはこれで最後にしよう。」
「…」
「これが、最善だと思ったの。」

「…じゃあ、最後に私からも蘭(あららぎ)に話しがある。」
「私ね、実はもう例の魔法使いさん見つけてたんだ」
「え…」
「…ずっと、見つけてないなんて嘘ついてた。ごめん。」
「なんでそんな嘘…」
「最初は、こんなつもりじゃなかったんだけどな…(ボソッ)」

「でも、もう会えないなくなるならせめて、蘭(あららぎ)の記憶の中で生きさせて。」
「今度は忘れないでね。」

そう呟いた連理は屋上の柵に手をかけ、体を宙に投げ出した。

「は…?」
「連理ッ…!(時を止める魔法の呪文)…!!」

すぐに時を止める魔法を使ったが意味はなかった。君の前で私の魔法は無力だ。今まではそれが心地よいとまで思っていたのに、こうなってしまえば自分の無力さに心底嫌気がさす。

「鵯(ヒヨ)ちゃんッ…!」
「!…名前、どうして…?」

「もっと早く、言ってくれればなぁ…」

ドスッ

私の世界に鈍い音だけが響いた。なんで、もっと早く気づいてあげられなかったんだろう…連理は鵯(ヒヨ)だって最初から薄々気づいてたくせに…思い出したくないからと無理やり記憶から消して…別に鵯(ヒヨ)のせいでだなんて思っていない。でも、あの日、鵯(ヒヨ)を助けていなければ家族を救うことは出来ていただろうか…、?…最低だな、私。少しでも鵯(ヒヨ)と出会わなければなんて考えてしまうんだから。
唯一の友人が亡くなっても涙さえ出ないなんて…なんて、薄情なんだろう…

ようやく落ち着きを取り戻すと私の世界に他の音が戻ってきた。下から聞こえる悲鳴とパトカーのサイレンの音…
…この状況、誰が見ても私が犯人だよね?私、捕まるのかな…まぁ、いいか…

もう、この世界に期待なんて持たない。


【鵯&連理】
もし魔法が使えたらどんなに楽しいだろう…子供頃はそんなことばかり考えていた。

ある日、立ち入り禁止の森に間違って入ってしまった。噂では大きな熊が出るとか、女の霊を見たとか…子供だったからこそ、余計に怖く感じた。
そんな中、森で迷ってしまえば当然パニックになってしまい、出口も分からなくなってしまった。そんな時、1人の女性が話しかけてくれた。

「子供…?どうしたの?」
「…グスッまよ、ちゃっ、て…」
「…見ててね」

そういうと辺り一面に綺麗な花畑が現れた。帰りはこの花畑を通れば家に着くと教えてもらった。

「わぁ…!」
「お姉さん、魔法使いなの!?」
「…まぁ、そうだけど…」
「すご〜い!ヒヨ(鵯)もね、将来は魔法使いになりたいんだ!」
「…そう、じゃあ特別に魔法を1つプレゼントしてあげる」
「え!ほんと!やった〜!」
「その代わり、私のことは誰にも言わないでね?」
「わかった!ありがとう!魔法使いのお姉さん!」

そういって、別れた次の日、またあの森に行ってみたらそこには更地が広がっているだけだった。

もらった魔法はただ人のオーラが見えるだけのもの。子供心にはつまらないと思ったものだが、今思えばうっかり人前で使ったり言ってしまっても問題無さそうなものにしてくれたのかもしれない。
そうしてお姉さんと会えなくなってから数年がたちこの魔法に関しても気づいたことがある。

①人によってオーラの色が違う
②種族によってオーラの形が違う
③魔法使いは輝いて見える

この3つだ。それから私はお姉さんを探す旅に出た。

人間に紛れて生活している魔法使いは以外にも多いらしく何度か声をかけてみたが全員違った。諦めかけていると、大衆の中に一際輝いて見えるオーラが1つあった。これで最後にしようと声をかけてみると、他の誰でもない、私がずっと探していたあの魔法使いのお姉さんだった。
だが、「あなた、魔法使いでしょ!」と声をかければ「違います」と言われてしまった。

助けてもらったのは随分昔だし、背格好も多少変わっている。だから警戒されて嘘をつかれたのだろう。オーラのことを話せば思い出してくれるかな?

「嘘だよ!だってオーラが違うもの!」
「オーラって、なんの事?」

…そう言われた時、なんだか嫌な予感がした。もしかして、本当に忘れてしまっているんじゃないか。そう思わずにはいられなかった。

「昔、助けてくれた魔法使いがくれたの!」
「魔法使いに助けられた?」
「そうだよ!」

思い出してくれた…?

「…」

…どうして何も言ってくれないの…?

「私ね、その魔法使いさんを探してるの」
「でm…」
「…その魔法使いの名前は分からないの?」

嗚呼、本当に覚えてないのか…きっともう思い出してくれないんだろうな…だったら…

「…忘れちゃったの。だからオーラで探してるんだ」

もういいや…お姉さんが忘れちゃったなら、私も忘れてやる。

「その魔法使い探し、私も手伝うよ」
「へ…、?本気…?」

お姉さんから思いもよらぬ言葉が返ってきた。

「冗談じゃないよ」

これはチャンスだ。神様が最後に与えてくださった最後のチャンス。

「魔法使いの蘭(あららぎ)。よろしく。」
「あ、えっと…」

…ここで名前を言ったら思い出してくれるかな…?いや、思い出されなかったら、やだな…。ここは…

「連理(れんり)です!こちらこそよろしく!」

蘭(あららぎ)があの時が出してくれた花畑の中にあった花のひとつを名乗った。昔のことを忘れてしまったのなら、今の私を忘れさせないよう、記憶に刻み込んでやる。

「あ、あのさ…」
「なに?」
「よければ、友達になってくれない?」
「一緒に遊んだりしようよ!」

友達になれば記憶に残ってくれるはず。

「…私は友達に向いていないからやめたら?」

思いもよらない返事が返ってきて、一瞬思考が止まる。
どうして…?私と友達になるのが、そんなに嫌なのかな…
また、離れ離れになってしまう、そう思わずにはいられなくて。不安で、不安で…口からはまくし立てるように言葉がつらつらと流れ出た。

「友達に向き不向きもないって!私が友達になりたいの!」
「一緒に遊んで欲しいだけだから…」

「…」

蘭(あららぎ)は少し悩んだあと、分かったと言ってくれた。でも、期待しないで。とも言われてしまった。どうしてそんなことを言うの…?そう言いそうになったがそれが声になることはなかった。

それから何度か蘭(あららぎ)を遊びに誘った。
これは何度か遊ぶうちに気づいたのだが、私は魔法が効かない特異体質らしい。これを利用して、世界の時を止めて世界を2人だけのものにしたり、イタズラしたり…すごく楽しかった。

だんだん打ち解けてきた頃、蘭(あららぎ)が家に来ないかと誘ってくれた。とっっっっても嬉しかった!!

「明日の1時でいい?」
「大丈夫だよ!」
「家の場所はね…」
「○○森の奥だよね!」
「あれ?話したことあったっけ?」

やば…反射で答えちゃった…

「あー…うん、聞いたよー!」
「そっか…?」

危ない…バレるところだった…。

次の日、私は元々知っていた蘭(あららぎ)の家に遊びに行った。

「あ、いらっしゃい…」
「お邪魔しまーす!」

それから1時間ほど遊んだ。でも、蘭(あららぎ)は何処か上の空な感じがして、違和感が込み上げてきた。もしかしたらバレたのかもしれない。急用ができたと言い今日は帰ることにした。

LINE💬
蘭(あららぎ)

(今日は急に帰ることになっちゃってごめんね!
よければ、明日また一緒に遊ばない?)連理

蘭(全然大丈夫だよ。明日は20時までちょっと難しいかも。)

(じゃあ、21時にいつもの喫茶店集合はどう?)連理

蘭(いいよ。)

とりあえず約束はできた。きっと、全部バレてしまっただろうな。あの時、知らないフリしてればバレなかったかな。いや、そんなことないか…今までも話していない情報まで知っているんだから、違和感が生じるのは当たり前だ。…最後に、一生記憶に残るお別れをしよう。

ある日の夜9時
蘭(あららぎ)と合流すると、屋上へ行くことは言わず着いてきてもらうことにした。

これで終わりか…

「これ、どこ向かってるの?」
「えっと…内緒、かな。」
「…そういえば魔女探しは大丈夫なの?」

正直ドキッとした。

「一旦大丈夫、かな…」
「もういいの?」
「蘭(あららぎ)と遊ぶの楽しいから!」

もう、正直に言ってしまった方がいいんだろうか…

「それに…」

…まだ、怖いな…。

「…それに?」
「ううん、なんでもない。」

それから少し時間が経った。その間、特に会話はなく蘭(あららぎ)もどこか上の空だった。

「さ、ついたよ!」
「へ…?」

…これで、終わり…。でも、まだ少しだけあなたと言葉を交わしていたい。

「で、屋上きてなにするの?」
「特にないけど、たまにはこういうのもいいかなって」
「別に屋上じゃなくても…」
「もー、そんな屋上嫌なの?」
「そういう訳じゃないけど…」
「じゃあいいじゃん!」

それから、普段しないような話もしてもうそろそろかななんて思っていた。すると、

「最近、誰かに付けられてる気がして…多分魔法使いと人間の関係を管理してるやつだと思うんだけど…」

誰かに付けられてる…?普段蘭(あららぎ)を見てる感じそんな人いなさそうだけど…

「連理は大丈夫?」
「え、私?私は大丈夫だと思うけど…」
「よかった。私が連理と出会ったせいで連理にまで被害が出てるんじゃないかと思ってたから…」

そんなこと、思わなくていいのに…

「…それでね、大事な話があるんだ。」
「話…?」

なんだろう…とても、嫌な予感がする。聞きたくない。この場から逃げ出してしまいたい。

「うん、私たちもう会うのはこれで最後にしよう。」

「…」

嗚呼、やっぱりか…でも、私のことはバレてなかったってことかな?

「これが、最善だと思ったの。」

だったら、その蘭(あららぎ)を付けてる人がいなければまだ、一緒に入れたのかな…?

…どうせこうしようと思ってたんだ。結局会えなくなるならこれでいい。でも…最後にこれだけ、言っておきたいな。

「…じゃあ、最後に私からも蘭(あららぎ)に話しがある。」
「私ね、実はもう例の魔法使いさん見つけてたんだ」
「え…」
「…ずっと、見つけてないなんて嘘ついてた。ごめん。」
「なんでそんな嘘…」

もし、言ってしまったらまた、蘭(あららぎ)が知らないうちに私の前から消えてしまうのではないかと、怖かったから。でも、それは伝えない。こんな時にも私には伝える勇気が出ない。

「最初は、こんなつもりじゃなかったんだけどな…(ボソッ)」

嗚呼、これで終わりだ。今日まで仲良くしてくれてありがとう。私のことを思い出してくれなくても、十分な程に私にとって楽しくて幸せな時間だった。でもね、また忘れられるのはもう嫌なんだ。

「でも、もう会えないなくなるならせめて、蘭(あららぎ)の記憶の中で生きさせて。」
「今度は忘れないでね。」

そう呟いて私は屋上の柵に手をかけ、体を宙に投げ出した。

「ごめんね…。(ボソッ)」

「連理ッ…!(時を止める魔法の呪文)…!!」

時を止める魔法…そんなの、意味ないのにな…
蘭(あららぎ)の魔法は私に届かず体はただただ下へと向かうばかり。この浮遊感がもう、後戻り出来ない、逃げ場はもうないと伝えているように感じる。
今度こそ、忘れないで欲しいな…今度こそ…

「鵯(ヒヨ)ちゃんッ…!」

へ…今、鵯(ヒヨ)って言った…?

「…名前、どうして…?」

ねぇ、どうして?気づいてたの?それとも思い出したの?
もう聞くことはできないなんて…こんなの、死んでも死にきれないじゃん…

「もっと早く、言ってくれればなぁ…」

そしたら、もっと一緒に、今までみたいに笑い合う楽しい未来があったのかもしれないな…

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鵯、連理、蘭 / 名前の由来
鵯(ひよ)→鵯上戸の鵯から
連理(れんり)→麝香連理想(じゃこうれんりそう)から(スイートピーの和名)
蘭(あららぎ)→フジバカマの和名

それぞれの花言葉
スイートピーの花言葉は、「私を忘れないで」「別離」「優しい思い出」
フジバカマの花言葉は、「優しい思い出」「ためらい」「遅れ」「迷い」「躊躇」「あの日を思い出す」
ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)の花言葉は、「すれ違い」「真実」「期待」

11/6/2025, 9:01:31 AM