これは私が学生だった頃の話。
いつも一人で過ごして、遠巻きにされていた先輩がいた。
仲良くしていたけど、家のゴタゴタに巻き込んでしまって……詳しいことは省くけど、私を庇って、片目と脳の一部を失った。見舞いのときも私は泣いて謝ることしかできなかったけど、先輩は私を責めることもなく、凪いだ目をしていた。
「謝るのを止めろとは言わんが、これだけは覚えておくと良い。お前も、私も、こうやって生きて帰れた」
未だ震える手で水を飲み、先輩は息を吐いた。
「お前の身に何かあったら、私は人を殺めただろう。思うことはあるだろうが、やらぬ後悔よりやる後悔だ」
包帯に覆われた痛々しい姿だが、先輩の手は温かい。
「お前のせいではないし、庇ったことを後悔していない。一つ頼むとするなら、これからも変わらず接してくれ。先輩と後輩としてではなく、友人の一人としてな」
Title「貴女の背を追って」
Theme「後悔」
5/16/2024, 4:08:38 AM