ストック

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「年にたった1日だけ、それも天の川を挟んでしか逢えないなんて、なんだか寂しい」
私がそう言うと、貴方は穏やかに言う。
「その1日のために残りの364日を一生懸命生きるのも、僕は素敵だと思うけどな」
私はまだ食い下がる。
「でも、その1日も触れ合ったりは出来ないんだよ。やっぱり寂しいよ」
貴方は少し沈黙した後、静かに言う。
「たとえ触れることが叶わなくても、顔を見られるなら僕はそれで満足だ。大好きな人が同じ空の下に生きてる。それを実感できるだけでも、十分に幸せだよ」
「欲がないんだね」と私が言うと、貴方は笑って言う。

「だって、大好きな人が同じ空の下に生きてること自体、それだけで奇跡だと僕は思うよ」

二度と会えない人の話をするとき、人はこんなに悲しい顔をするんだと私ははじめて知った。

貴方と別れた後、私は商店街の片隅に置かれた笹飾りに短冊を結びつけた。

「いずれ、貴方が星空の元へ還ったときには、貴方の大切な人と再会できますように」

織姫と彦星。
たった1日だけの対面だけども、どうか今年も会えたことを喜んでいてほしいな。

7/7/2023, 3:04:56 PM