その人は一言「長生きしたいから」と呟いた。確か、最近食べる物や量を気にしているという話からだ。横目に顔を見ようとしたが、表情は窺い知れなかった。お互い若くはないが、老い先短いというにはまだ早い。仮にこの人が突然いなくなったとして、自分はそこからあと数十年ほど生きる必要がある。あと数十年、ありもしないこの人の影を追いながら生きるのは確かに御免だ。今更残りの人生を自由でいられる気もしないから、元気で長生きしてくれれば本当に助かる。さっきから横から飛んできている、だからあなたも気をつかうようにいつも食べすぎ今日はそのへんにしなさい等々怒涛の説教を聞き流しながらそんなことを考えていた。
(題:忘れられない、いつまでも。)
5/10/2024, 8:59:28 AM