『愛があれば何でもできる?』
ただ親同士に決められた相手として見ていた。
今宵、王城でのパーティに呼ばれるまでは。
行けば婚約破棄されると知っていた。仲のいい友人や家族たちは、行かなくてもいいと言ってくれた。
でもね。
「リーナ・オブライェン! お前との婚約を破棄する!」
どうしてもこの男に聞いてみたいことがあったの。
「かしこまりました」
「は? ああ、そうだよなお前はいつも」
「隣にいらっしゃる令嬢が好きになった。私が彼女に嫌がらせをしている、と。そうおっしゃるのね?」
「王子である私の話を遮るとは!」
「王子ぃ、私こわいです……」
組んだ腕をさらに絡み合わせる二人。
ねえ、教えて。
「愛があれば何でもできるって言ったわね?」
「無論だ!!」
扇で隠していた口から甲高い笑い声が漏れる。
なんておかしな人!ねえ、教えてあげるわ。
「私の家が得としている分野はご存じかしら? 王国のための情報収集、他国との緩衝、飢饉の際の保存食及び住居の提供。これらはすべて私たちの婚約あってこその我が家からの提供ですのよ」
辺りがざわめき、そう遠くない距離にいる元婚約者の顔色がみるみる悪くなっていく。
隣にやってきたお兄様が王家への援助を断つ旨を告げる。入口までの道を開けてくれるのは友人とメイドたち。駆け寄ろうとする者たちは父と母に止められていることだろう。
それら全てに背を向けてパーティ会場を後にする。
「リーナ!」
元婚約者である王子が私の名前を呼んだ直後に扉は閉まった。
ねえ。私、あなたが私を愛すると言ってくれたから、何でもしようって思っていたのよ。
5/16/2024, 12:24:16 PM