郡司

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目が覚めるまでに

「眠り」と「目覚め」。時間軸とか尺とか次元とか、いろいろ異なる状況下にある。たぶん。

目が覚めるまでに、キリの良いところまでやるべきことをやりおおせてる。たぶん。

「戻り」は、帰還する時空座標の確定と、「身体という事象焦点」への再定着を、正確に実行する。たぶん。

医師が臨終宣言をしてもなお、寝息を立てている親戚があった。呼吸の動きは全く無い。けれども、元気そうな寝息が聞こえていた。訃報を受けて次々現れる人の中にも、「ちょっと、寝息立ててるじゃないの。でも…確かに息してないわね」と、困惑する人が複数いた。とりあえず、ちゃんと状態の自覚に至るのが必要なんじゃないかという話になり、いちばん「話のできそうなの」は誰か…皆の目線の先に実の娘。「やだよ、おとうは死んだんだよって本人に知らせるなんて」と拒否。妻に目線が移動したら「私も無理」と拒否。結局、心理的距離のある姻戚の者が、本人に「知らせた」。なんのことはない、「揺り動かして目を覚ましてもらった」のだ。そして本人の曰く、“まったく気付かなかった。何も苦しくなかった。自分でもびっくりしている”と。再定着に失敗してしまったかたちで亡くなったかもしれない。ともあれ、人生への万感や家族の心への衝撃あれども、ほのぼのした空気のなかで「次へと目を覚まして行った」人だった。

8/4/2024, 7:50:28 AM