七色:
雨上がり、瞳の中の色彩に宇宙を見た。
星雲のような虹彩に取り巻かれた吸い込まれる暗闇の瞳孔、その奥で光を受ける水晶体が映す景色は本当に自分が見ているそれと同じなのか、まるで信じられなかった。
覗き込んでしまえば、この身が落とす影でその形も変わるだろう。それがひどく魅力的に思われながらも、凪いだ湖面に映る己を認めるのは躊躇われ、ただ見つめることがやっとだった。
瞬きのたび、射し込む光が反射している。
かすかに震えるしなやかな睫毛が穏やかな木漏れを思わせながら伏せられていき、水膜を湛えてまた陽光に向き合う。
「見て、虹が出てる」
横目に見れば確かに滲んでぼやけたような橋があったが、それよりもずっと近くにある瞳の宇宙から目を離したくなくて、中身のない相槌で誤魔化した。
3/26/2025, 1:16:21 PM