手のひらから砂がこぼれ落ちるように。そんなありふれた例えが何よりしっくりくる。君との思い出を語るなら、きっと砂時計が必要だ。思い出が多すぎて、どこまでも話し続けてしまうから。
「痛みに慣れてしまわないで」
君がどんなつもりで言ったのかは知らない。でもぼくの忘れられない言葉。メールの片隅のほんの一言が、ずっと胸に残ってる。
君もぼくも、たぶん人より少し変わっていて。ぼくはあの頃全部が欲しくて、でも全部が嫌いだった。心なんて痛いのが当たり前で、悲しくても泣けなくて、助けてなんて言えなかった。それでも虚勢を張って笑ってみせた。とてもか弱い子供だった。
そんなぼくに、君は優しかったし、明るくいつもいろんなことを話して聞かせた。
それらしい言葉を並べるのは得意でも、本当の意味で人と関わることが苦手なぼくは、君のそのおしゃべりを聞くのが好きだった。
君はいつも僕を肯定して、時々蜂蜜みたいな言葉をかけた。拭いきれずに残るようで、でも嫌いになれなかった。
だけど時間はいろんなものを変えていった。君とぼくの間にあったか細い糸はとても頼りなかった。
少しずつ行き交う言葉は減って、ついには絶えた。
もう過去は過去で。君も過去で。別に戻りたいわけでもなくて、でも時々思い出す。それだけのこと。
だけどそれなりに、大切な思い出。
〉友だちの思い出
7/7/2022, 1:36:44 AM