良さ塩梅

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僕は今、数学の問題と戦っている。
受験に数学は必須。だけれど、びっくりするほどできない数学。
姉ちゃんは昔、中学入ってからコツコツやらないとできなくなってしまうと言っていた。だから、今からコツコツ、と。
うんうん唸っていると、姉ちゃんが僕の背中にもたれかかり、ハグをしてきた。

「困ってしまった弟を見て、あねさんは何を思うだろうか。」
「…なんだよう。」
「いい?想像してみんしゃい。いま私が服を着ていないとして、生のおっぱいがあんたの背中に当たっているとする。」
「生のおっぱいって、やめてくれ。」
「それどころじゃなかろう。」

言わずもがな、かまってほしいのである。

「服は着ているんだね?」
「自分で確認してみてござれ。」
「着てないとかやめてよね。」
「どうでしょうなぁ。」

姉ちゃんは、僕の目元を手で隠す。
なんだか、変なことをされている気分だ。
抵抗せずにボーっとしていると、姉ちゃんはつまらなそうに僕の頭をはたく。
明るくなって姉ちゃんを見ると、よかった、服を着ている。
僕の深緑色のTシャツをダボダボにして着ている。
いや、服に着せられているのだ。

「…姉ちゃんは、どうして医学部を選んだの?」
「人間の中身に興味を持ったから。」

順調に大学へ通っていたと思っていた。
将来は医者になると思っていた。
両親も、娘が国立大学医学部へ進学して、鼻高々だったであろう。
しかし、5年生の途中で中退し、実家へ舞い戻ってきた。
なんで、どうして、聞きたいことはたくさんある。
布団の中で、僕の胸を求めてまで、毎晩泣いているのはどうして。

「お菓子でも食べましょうよ。」

僕の顔をベタベタと触り始める。

「…あぁい!もう!わかったよ!」

僕の手を引き、意気揚々とリビングへ歩き出す姉ちゃん。


ダボダボのシャツの隙間から見えた姉ちゃんの身体は、赤く痛々しい切り裂き傷でいっぱいだった。

1/15/2023, 5:22:25 AM