少し前から、彼女は俺が近くに居ないところで、よく左手を見てはにこにこしている。
俺が近くに居なくても視界に入ることはよくあることで。
だから、光が入るところに手を差し出して、ふふっと笑っているのは知っていた。
その様子は……とても、とても嬉しい!!
というのも、彼女がみている左手には俺が去年クリスマスに贈った指輪がはめられているからだ。
以前にも薬指に収まる指輪を贈ったことがあったので、サプライズとしてプレゼントできた。
一粒のアイスブルーダイヤモンドにプラチナリング。薬指に付けられるように調整したのだから、まあ……そういうことである。
その指輪を見てにこにこしているのは彼女が喜んでいる証拠だった。
俺の前でやってくれてもいいんだけれど、きっと我慢しているんだろうな。
自然と俺も顔が緩んでしまう。
だって可愛いでしょ。
彼女のそばに戻ってソファの定位置に座る。いつものようにしているけれど、来る直前も指輪を見て笑っていたのは見ているんだからね。
俺は彼女の左手に優しく触れた。
彼女がいつも以上に身体をビクリと震わせる。少し照れたような、焦ったような顔で俺を見つめた。
「指輪……嬉しい?」
「はい! めっちゃ嬉しいです!! 私の好きな色だし、可愛いし、なにより……あなたがくれたから!」
大輪の花が咲く。そんな表現をしたくなるような眩い笑顔に、目を細めてしまう。
「喜んでくれて嬉しいけど」
「けど?」
「ちゃんと、そういう意味で渡しているからね」
少しだけ驚いたような顔をしたけれど、はじける笑顔を向けて俺の胸に飛びついてきた。
「だから、嬉しいんです!」
内側から嬉しい気持ちが溢れてきそう。それを鎮めるためにも飛びついた彼女をそっと、でも強く抱きしめ返した。
おわり
二四三、そっと
1/14/2025, 2:06:46 PM