めしごん

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星空の下で


草原の夜明けの雫から産まれた命の幾つかは、空に昇って金銀の煌めきへと変わる。
ねぇまた夜の女王の元に太陽の大君が罷り越してるよ、大君のご寵愛は毎夜の事だよ、女王の腕の中は余程心地いいとみえる。フン、以前のように夜毎日毎でないだけマシだね、遠い昔は溺愛が過ぎて世界から昼がなくなっちゃったんだからさ。
星々の無邪気なさざめきに、古森の魔女は苦笑した。

「まったく、新しい子達はきらきらぴかぴかうるさくて慎みを知らないね」
「姑みたいな事を言ってやるなよ。嬉しいんだろ、空に昇れて、女王の裳裾に侍れてさ」

夜の女王の豪華な裳裾が翻る度に、星々は身体を震わせさんざめき、きらきらと地上へと金銀の砂子を零す。
古森の槐の木のてっぺんで、大きな壺を抱えたオーレンは夜空から零れる星砂を受け止めながら魔女に笑った。

「星が騒ぐからこうしてお前さんの薬の素も採れる、いい事じゃないか」
「まぁね」

星が騒ぐ夜に零れる星砂は魔女の秘薬のひとつになる、壺を槐の太い枝に括りつけてオーレンはヒシと幹に抱きつくアンジェリカに手を差し伸べる。

「一人で降りれるか?魔女どの」
「うん、…うん、無理かも」
「だろうな。まあそのために俺がいるんだ、存分に頼ってくれ」

槐の木のてっぺんでオーレンの太い腕に抱き止められて、奥手な魔女は女王の裳裾でさんざめく星々に負けないほど身体を震わせ、顔を真っ赤にした。


4/5/2024, 1:13:34 PM