『今宵は月が綺麗ですね。』
「ここって、故人図書館で合ってる?」
『左様でございます。よくご存知で。』
「友達に聞いたんだ。色々相談に乗ってくれたって。」
『あの時のお方の友人でしたか。それで、ご要件は?』
「僕の相談も乗ってよ。」
『ここは死者の記憶を記す場所であって、相談室ではありませんよ?』
「知ってるよ。でも、周りの人間は誰も話を聞いてくれないんだ。仕方ないでしょ?」
『今回だけですよ。それで、相談とは?』
「僕、もうすぐ病気で死ぬんだ。」
『左様ですか。それが何か問題でも?』
「死ぬのが怖いんだ。」
『死とは、誰しもに平等に与えられたものです。抗えませんよ?』
「そんな事は分かってる。僕は、世界から忘れられたくないんだ。」
『忘れられませんよ。そのための故人図書館です。それでも怖いのなら、月に願えば良いのです。』
「何で月?普通、星でしょ?』
『星は数え切れないほどございます。すぐに、どの星に願ったか忘れてしまいます。だから、一つしかない月に願うのです。貴方様の道標になるように。』
「なるほど。そうだね。」
『もう、怖くはありませんか?』
「うん。ありがとうね。貴方のお陰で、現実と向き合えそうだ。」
『それは良かった。』
「じゃあね。」
『貴方様の物語、楽しみにお待ちしております。』
『皆様は月に何を願いますか?またのお越しをお待ちしております。』
5/26/2024, 2:41:39 PM