「このままずっと一緒にいたい」
ケルマーはそう言った。
この告白がどういう理由で、どういう意味を持ってとらえられるかは、ケルマーにとって、不確信なものだった。
彼女、リリアはこう言った。
「ケルマー様。公爵令嬢である、私リリア・パロットは思います。このために、私は生きてきたと。リリアは、戴冠式に是非とも出席をしたく思いますわ」
それは、ケルマーにとって、幸福の始まりだった。
過去の精算。
回り回って出会った、幸せの歯車は噛み合い始めようとしていた。
それは、リリアという素晴らしい伴侶のために、この身を、この国を捧げるという意味であった。
ケルマーは、なぜ彼女を愛したのか?
彼女の魅力について一言で語ることはできないが、一つと問われるならば、その並び立つ者のない才芸であろう。
聖歌。
彼女は、彼の前でしかその神秘的な歌声を披露したことはなかったが、彼は素晴らしいと思った。
「公の場で歌えばいいのに」
と言うと、彼女はいつも鼻高々に笑った。
「あなたの前だから、歌えるの。それに、神前で歌うというのは、私には向いていません」
その公爵家の令嬢という地位が、彼女を歌姫という職業に就かせることはなかったのだが、それは彼女にとって幸せだったのか。
1/12/2024, 10:25:24 AM