「夏の匂い」
───── …市の最高気温は36度。
本日も非常に厳しい暑さとなっております。
外出される際は、熱中症対策を...──────
いつも見ているニュース番組のお天気コーナーでは、連日、決まり文句のように熱中症や暑さに関する注意喚起が行われている。
6月の末にも関わらず、真夏並みの暑さだ。
リビングの南向きの大きな窓にはカーテンがかかっており、強い日差しは部屋に入ることなく遮られている。
大きく息を吸うと、スーッと鼻に抜ける冷気が気持ち良い。少し前からフル稼働となったエアコンのおかげで、室内は快適な温度に保たれている。
いつからこんなにも暑くなったのだろうか。
昔は真夏でも、朝からエアコンが稼働することはなかったはずだ。
カーテンの隙間から見える、コンクリートの道路は太陽でもないのにギラギラとしており、眩しい。
今日は貴重な休日だが、この光景と、読み上げられていた気温のことを思うと、外出する気にもなれず、床にゴロリと転がった。
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目が覚めると、当たりは少し暗くなっていた、というよりも日が陰っているだけでまだ外は明るい。
時計を見ると、時刻は18時半。
少しの昼寝のつもりが、かなり寝入ってしまったようだ。
──────やってしまった、貴重な休日がほとんど寝ているだけで終わってしまったようだ。
これも全部、やる気をなくさせる暑さが悪い
と責任転嫁しながら外を見る。
コンクリートをギラギラさせていたあの日差しは、少し陰りをみせており、時期相応の気温にみえる。
(・・・少し散歩にでも行くか)
そそくさと、着替えをすませて外に出る。
ガラリと玄関を開けると、生ぬるい空気が全身をおおう。
玄関は扉1枚開くだけで、室内の冷気と外の熱気が混じりあって不思議な空間だ。
外に出て、一息深呼吸。ぬるい空気が鼻をとおる。
先程までのエアコンの冷気をまとっていた体が、一瞬で外の空気ととりかえられたようだ。
少し湿気がまとわりつくようだが、そこまで不快感はない。
ぬるくなった体と共に、夕暮れ時の散歩に出かける。
スーッとしたエアコンがよく効いた室内は快適だが、外のなまぬるい空気の方が、体によく馴染む気がする。
7/1/2025, 3:00:34 PM