死にたい少年と、その相棒

Open App

  /もしも未来が見れるなら

未来が見えたところで、なんの意味も無い。
未来が見れたうえで過去に戻れるならば、成したいことは沢山あるけれど、過去に戻れないならばもう……。

「これから僕が何をどうしたって、君は帰ってこないもんね」
墓石に話し掛けた。ここに、かつて僕の友人だった彼はいない。もう、この世のどこにもいない。
「僕もね、早く君のところに生きたいのに、アレが邪魔ばっかりするんだ。酷いよねぇ」
笑い、持ってきた酒を墓石の前に置く。君と、よく一緒に飲んでいた酒だ。
もう一緒に飲むことすら出来ない。
「君が僕に生きろなんて言うから、アレが邪魔しに来るんだよ。ほんと、嫌な呪いだ」
サァっと風が吹いた。その風に乗って遠くから、嫌いな彼の声が届く。僕を探しているらしい。
「ふふ、普段は見つけられないくせに、僕が自殺を試すと必ず邪魔しに来るんだよ? 野生の勘ってヤツかな」


「また、気が向いたら来るよ。アレが来ちゃうと一気にうるさくなるからね」
短い墓参りを終えて立ち上がった。

今日は良い天気だから、川にでも飛び込んでみようかな。

4/19/2023, 11:17:41 PM