『紅茶の香り』
「ねぇ、それ何の匂い?」
通りすがった彼からふわりと香る。上品な匂いに鼻腔をくすぐられると同時に、何処か気持ちがささくれ立つのを感じた。
「ん、?…、わからん。何か俺から匂いするか?」
自分の服を嗅いでみて、頭を傾げる様子に本人は気づいていないようだ。
「…いや、何でもないよ。試合頑張ろうね?」
気のせいだったみたいと言い、彼に向かってニコリと微笑む。
「あぁ!」
二人で腕をタッチし合って、笑い合う。
彼が、どこに行って誰と会ってきたとか僕には、お見通しだが、それを指摘するつもりも無ければ、どうこうしようという気もない。なんで、僕が彼に対して、こんなに苛つくのかもわからない。
だけれど、彼から香ったこの紅茶の匂いは…嫌いになりそうだった。
10/28/2024, 1:35:57 AM