haruru

Open App

スマホのカレンダーを遡る。大した理由はない、暇を持て余して刺激を求めることしかできなくなった脳が、短絡的にいつもと違う動作を指に命じただけ。

表示された先月のカレンダーはたくさんの予定でカラフルに彩られている。友人との旅行やカフェ巡り、推しのライブに見たかった映画。1日に複数の場所を回ったら次の日は丸1日ゆっくり休む。そんな予定を事細かに隙間なく埋めたカレンダーが思い起こさせるのは目に映る全てが煌めいていた弾けるような日々、よりも予定を書き込んだその瞬間の記憶。

更に先々月のカレンダーを表示すれば、半分と少しが1色で塗られていて、その後は夏祭りやらショッピングやらと浮き足立った色が並ぶ。これを書き込んだ頃の私はぷかぷかと宙に浮かんだままの気持ちを隠すこともなく、いずれ訪れる未来に思いを馳せていた。それを、今鮮明に思い出した。

私はこれから、行く先々で撮ったたくさんの写真を見て、買った服やグッズを見て、この夏の記憶を何度でも思い出すのだろう。鮮烈でいつまでも色褪せることのない大切なもの。それは何も、その瞬間だけじゃない。活力にして乗り越えた課題が、あれこれ想像しながらした準備が、そうやって心待ちにした時間全てが愛おしい。

笑みが溢れた。思わぬ所で過去の自分から幸せを分けてもらった。それならば今この瞬間の私は未来の私へ、何か幸せを残せないだろうか。逸る気持ちはそのままに、私は未来のカレンダーを表示した。


『カレンダー』

9/12/2023, 10:56:54 AM