懐炉 @_attakairo

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 姿見の前で裾をつまむ。
 爪先を引いて、もう何度目かの印象練習。

 ――とっても素敵よ! ほら、やっぱりこの色が似合うでしょう?
 叔母の称賛が過ぎっても素直に受けとめられなくて。
 次にくる言葉は決まっているから。

 ――ああ、姉さんにも見せたかったわ……

 鏡と写真を見比べる。
 棒立ちになれば、途端にうなだれる肩と首。
 対して貴方の、気品にあふれた佇まい。

 悪気がないのはわかってる。それでも重くのしかかる。
 今の娘の姿を見たら、どんな顔するだろう。赤子のままでいられたら、どんなに幸せだっただろうか。
 周りの賛辞を真に受けてでも胸を張っていられるように、冷ややかな視線に微笑む努力がいつかは実を結ぶように、
 写真の前で一歩下がって礼を尽くす。
 脚はいまだに震えるけれど。


「まあ、こんなところにいた!」
「叔母さま」
「探したのよ。もうすぐ迎えが来るはずだから……あら」
 ――じっとしていて。
 すると、からだのあちこちに手が伸ばされ。
 編み込まれた髪や襟元、裾のレースや飾り物。引き締められ、整えられ、終いに背中を軽く叩かれ。
「猫背が直ってないわよ」
 叔母の動作は手慣れていて、
 そしてなぜか、
 遠くの日々を懐かしむような優しさがあった。

 急かされるまま歩き出す。
 今夜もし上手くいかなくても、貴方に報告できる気がした。

【時を結ぶリボン】

12/20/2025, 3:56:56 PM