抹茶売りの少女

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その日は雨が降っていて、それから2日も経った今も、雨が降っていた。

彼女は、近所の丘の上にある公園が好きだった。
学校だとみんなに冷やかされるからね、って。
自分がついた頃にはいつも、古いブランコをギコギコ鳴らしていた。
「あと2日で梅雨だって。もう2日しかないんだって。君のサッカーも見れないよね」
そう言って、雲ひとつ無い夕焼けをすこし見上げた。
「2日しか無いのか。」
さみしいねと言いながら横を歩いた。
傘さすと距離が出来ちゃうよね。もしそうだったら、横に入れてね。私を入れてね。
そう、約束した。

たった2日で、やっぱりぴったり梅雨に入った。
最悪だと声が飛び交う教室を飛び出した。
でもきっと、彼女はいないんだろうな。
雨、嫌いだもんなあと思いながら傘をさす。
2年しかいっしょにいないけどいないと勘が言う。

帰ってあったまってると彼女から返信が来ないことに気付いた。
雨音は強まる。
その夜、彼女の親から連絡が来た。

何が、2年しかいないから、なんだろう。2年もいたじゃんか。
長い長い2日間を、耐えて耐えて耐えた。
彼女の頬は乾いていて、車に乗るとき傘を差してあげたけど、それでも1滴は頬に乗ってしまった。地面は湿っていて、滑りやすかった。

そっかあ。梅雨だもんなあ。
しょっぱい味を噛み締めていたら、
もう3滴ほど、真っ白な頬に乗った。

雨はもう降ってないことにすら気づかなかった。


6/1/2023, 10:52:11 AM