わたあめ

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眩しい陽射しが降り注ぐ中、今年産まれた3羽の息子たちは無邪気に飛び回っている。
片翼が小さく産まれたミカキも上手に空を飛べるようになった。兄弟との競争にも負けていないようだ。そんな子どもたちを見て父親のバトは嬉しく思う。ただ、それは平坦なこの地だからである。
渡りの時には一日中飛び続けなければならない。それも何日も。さらにその後には最大の難所であるヒマラヤ越えが待ち構えている。
ミカキに山を越えらるのか。それができなければ、ミカキとふたりでこの地で冬を越すか。ここの冬は過酷であると聞く。食べ物もなくなり、凍てつくような寒さの中数ヶ月を過ごさなくてはいけない。

自分一人では結論が出せないと判断したバトは群れのリーダーであるタングに相談に行った。
タングも同じようにミカキの事を心配していたようだ。タングは参謀の一人であるナムゲルを呼んだ。ナムゲルの飛行には力強さがある。ナムゲルの元で飛行術を学んではどうかとタングは提案した。

その夜、バトはミカキにその話をした。
「ボク、ひとりで?」
ミカキは不安そうにバトに聞く。
「ミカキが行くなら、僕も行くよ」
そばで聞いていたリグジンが大きな声で言う。
「僕も修行したい!」
ジグメも負けずに言う。
「お前たちは食べ物を集めたりする必要がある」
なんと優しい息子たちだろう。
「わかった。じゃあ、ジグメと僕は交代でいこう。ミカキとジグメが修行している日は、僕がみんなの食べ物を集めてくるよ。次の日はミカキと僕が修行するから、ジグメが食べ物を集めておいてよ」

バトはその事をナムゲルに話に行った。ナムゲルは
「おやおや、弟子がいっぱいになるな」
と嬉しそうに言った。
「ただ、ひとりでふたりを見るのは少し大変なので、バトもきてくれるかい?」
ナムゲルは数年前、息子を山越えの時に亡くしていた。そのため、ナムゲルにとって若鳥を無事に山を越えさせると言う事は息子への弔いであり、宿命のように感じていた。

翌日からナムゲルによる飛行訓練が始まった。
訓練は2つ。長距離の飛行と高度の飛行だ。
初日はジグメとミカキが参加する。
まずは平坦な地で長距離飛行の訓練からだ。
「ゆっくりでいい。出来るだけ長く飛んでみよう」
ナムゲルに続いてミカキ、ジグメ、最後にバトが飛ぶ。ゆっくりと湖の周りを何周もする。
「もう疲れたよ」
先に音をあげたのは、ジグメだった。
「ははは、じゃあ少し休憩だ」
ナムゲルは笑いながら高度を下げ、草地に降りる。
「ミカキは上手く力を抜いて風に乗れている。同じ速度で飛べるのも体力を温存するのに素晴らしい。ジグメは速度が一定ではないから、加速するのに余計な力がかかって疲れてしまうんだと思うよ」

〈中途〉

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お題:飛べない翼

11/12/2024, 12:41:35 AM