タキシードに身を包んだあなたが、白のドレスの女性の手を取るのをみた。愛おしい眼差しを交わし合う。
私は目を背けようとしたが、それは許されなかった。
白いドレスに身を包んだ女性が、何も知らずに私に微笑みかけてきた。
これからも、よろしくね。
はい。
私はこわばった顔で答える。上手く笑えていないのがわかる。
こちらこそ、よろしくお願いします。
それだけいうとさっとその場を離れる。もう、二人を見ることに耐えられなかったから。
私はずっとあなたが好きだった。
それこそ、物心がついたころから。
名前を呼んでは、後ろをついて歩いた。
大きくなっても、たくさんのひとと出会っても、あの人しか、見えなかった。理由なんてない。
あなたが全てだった。
けれどもあなたにとって私は、最後の最後までただの妹のようなものだった。
――知ってた。だけど、いつか振り向いてもらえたら。
でもそれも、今日で終わり。
あなたは本当に、私を見ることはなくなった。
そして会場から逃げられないまま、ライスシャワー。
私はその中に混じったけれど、参加することなど出来なかった。
そしてブーケトス。
ブーケは私の胸に当たった。反射的に落とさないよう手に取る。
白いドレスの女性が屈託のない笑顔を向ける。その笑顔を見つめるあなたの姿。
みんなの歓声が私を取り巻く。
私はブーケを手に持ったまま、一生の恋を永久に失った。
*****
他の誰にも受け取ってもらえなかったブーケとともに、涙と嗚咽をこらえて二人の退場を見守る、ピンクのドレスに身を包んだあなた。
あなたがずっと、あの男しか見ていなかったのを知っていたからこそ、僕は彼女に掛ける言葉が浮かばない。
あなたにとって僕はずっと、弟のようなものだった。
今も、これからもそれは変わることはない。
あなたをずっと見つめていたからこそ、わかってしまったんだ。
これからも一生、あなたはあの男を想い続けるのだと。
お題:失恋
6/3/2023, 1:49:22 PM