【透明な羽根】
夕方のグラウンドで、ボールがフェンスに当たって跳ね返った。
「あーもう、お前また外した!」
「ちゃう、風が変な方向から吹いたのが悪い。」
「はいはい、言い訳乙~。」
二人で笑いながらボールを拾いに走る。
その途中、土の上で光るものが目に入った。
拾い上げると、薄くて透き通った羽根だった。
「なんやこれ、ガラス?」
「ちゃうやろ。鳥の羽根ちゃう?」
「こんな透明の鳥おらんでしょ。」
冗談を言い合って笑い転げたあと、なぜかその羽根だけはポケットにしまった。
なぜかは分からない。
ただ、持っておかなければならない気がした。
それから時が経ち、あいつは仕事で県外に行った。
最初は連絡取ってたけど、だんだん間が空いた。
それが当たり前だとわかっていても、やはり寂しかった。
忙しいのだろうと思いながら、たまにポケットの羽根を見ては悲しくなった。
ある夜、コンビニ帰りにスマホが震えた。
画面に表示されていたのは懐かしい親友の名前だった。
「今度帰るねんけど一緒に飲まん?」
スピーカー越しの声は昔と変わらず明るく響いた。
見上げた夜空にふわりと白い物が落ちた気がした。
手のひらに広がるのは、あの透明な羽根。
羽根は街灯に透けて、まるで笑い声のように明るく光っていた。
11/8/2025, 12:41:16 PM