黄橙色の 化石のなかに
「己は、まだ生きているのか」と
思わず問うほどの 虫の姿があった
ぼくは 少し寒気がした
(三千万年前の 姿が そのまま
そのまま 残っております——
それが 本商品の 売り であります——)
◇
限りなく ちいさな泡が立ち込めている
この頃だって 誰かが
空気を汚していたはずさ
(冗談であるかは 分からない)
虫は もがいていた
にもかかわらず
混在する葉だけが輝きを増していた
◇
黄橙色の 薄い膜が張っていた
琥珀色の塊に 閉じ込められた 虫に
ぼくは 会えるだろうか
人類の叡智によって 立ち会えるだろうか
君を 救うことが できるだろうか
もしぼくらが 出会えたのであれば
伝えて みたい
「翅は まだあるじゃないか
また飛び直せるさ」
と
◇
虫はもがいていた
黄金の輝きにも負けず 逃げるために
生きゆく我々には その必死さが
はたして あるのだろうか
7/22/2023, 1:15:07 PM