木枯らしが吹いて、季節は秋から冬へと変わる。街路樹たちがはらはらと葉を落として、さみしさが増していくこの頃。
そんな中で、とある公園にいつまでも葉を残しているイチョウの木があった。
通る人々は皆不思議がったが、それもひと月もすると、日常の風景になった。
そのうちクリスマスの時期になって、せっかくだから、と、色とりどりのオーナメントが飾られて、イチョウはみごとな黄金色に輝くクリスマスツリーになった。
そのイチョウは満足げにこう呟いた、かもしれない。
「ああ、木枯らしにお願いしてみてよかったなぁ。こんなにあたたかい、人に囲まれた冬を迎えられるなんて」
『木枯らし』
1/17/2024, 1:17:38 PM