見咲影弥

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ちらほらと舞う雪に手を伸ばす。

「ゆみちゃん。雪、雪だよ!」

親友のななえは珍しいものを見たようなリアクションをしてはしゃいでいる。

何がそんなに楽しいんだか。

「雪、積もればいいのに」

彼女は手のひらで溶ける雪を名残惜しそうに見つめるけど、雪国出身の私はこの無責任な言葉を聞く度にうんざりする。

何が積もればいい、だ。積もったら雪かきも大変だし寒いし、家に篭りきりになる。いいことなんてない。

雪遊びができるなんて笑っていられるのも最初だけだ。

こういう能天気な言葉にはイライラが募る。

校門の前に理科の先生がいた。

おはようございます、彼は眼鏡をクイっと上げ、心のこもっていない挨拶をする。この人はいつも仏頂面で冷たい。私があんまり好きじゃないタイプ。

「おはよーございまーす」

ななえもななえで、気の抜けたような返事。

私たちがすーっと通り過ぎようとした時、彼がボソッと囁いた。

「こういう牡丹雪の場合はすぐ溶けて積もらないよ」

ななえが私の手を掴んで下駄箱まで走る。

「何あいつ、きっも」

息切れしながら彼女は言う。

私はその時心底気分が良かった。彼女の歪んだ顔を見られたから。追い討ちをかけるように言う。

「雪なんて積もらないよ」

ばーか、と最後に小さな声で付け足した。

親友の心を弄ぶのは、やっぱり楽しい。

1/7/2024, 10:15:27 AM