—未来視—
未来の自分を見てみたい。
そんなふうに思ったことは、だれしもあるだろう。
「博士、未来がみれるって本当か⁈」ランドセルを背負った春太が声を張る。
「あぁ、ついに完成させたぞ。タイムマシーン第一号だ」
博士は、それにかけられた白い布を取る。大きいメガネが一つ現れた。
それを見て、春太は訝しげに博士を見る。
「これが、本当にタイムマシーンなのか?」
「パパがそんなの作れるわけないでしょ」
博士の娘、奈美が言った。
「いつもの発明品を見てみなさいよ。ろくでもないものばかり作ってるじゃない」
「待て待て、今回の俺は一味も二味も違うんだ。春太、覚悟しとけよ」
博士の言葉を聞いて、春太の表情は明るくなった。
「だがな、タイムマシーンとは言っても、一回しか使えないし、未来の自分と会話することしかできない。それでもいいか?」
「もちろんだ!これ、つけてもいい?」
博士は、了承すると、春太はすぐさまそれを装着した。春太は、視覚も聴覚も大きなメガネに奪われてしまった。
そして映像が流れる。
「未来の俺ですか?えっと、大谷春太です」
『おぉ、過去の俺か。初めまして』
「すごい、本当にタイムマシーンなんだ」
春太は感嘆の声を漏らした。
「時間があまりないので一個だけ聞きます。俺は、漫画家になれますか?」
『なれるさ。だって今、俺は漫画家なんだ』
「俺すげー!」
『だがな、未来がわかったからといって、安心しちゃいけない。たくさん、たくさん絵を描き続けてくれ。頑張れよ』
「はい!」
ブラックアウトし、春太はメガネを勢いよく外した。
「博士、ありがとう!これからも頑張るよ」
彼は研究室を飛び出していった。
奈美が大きくため息をつく。
「本当に良かったのかしら。AIを使って嘘の未来を見せるなんて」
実は、実際に春太と会話をしていたのは博士だった。変声し、その声に合わせてAIが映像を動かしていたのだ。
「あぁ、いいんだよ。あいつ、ちょっと前に才能ないからって諦めようとしてただろ」
「うん」
「十年とちょっとしか生きてないあいつが、そんな理由で諦めちゃいけないんだよ」
博士自身も、内心ではいい手だと思ってはいない。
だが、博士は信じていた。彼がその未来を現実にしてくれると。
博士には、そんな勝手な未来が見えていた。
お題:タイムマシーン
1/23/2026, 7:59:49 AM