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どこまでも青々と広がる大地に柔らかい日差しが降り注いでいて、
色彩豊かな花々たちは、嬉しそうにその光を抱きしめている。

目を覚ました少年の目に飛び込んできたのは、そんな光景だった。

起き上がって周りを見渡してみても、どこまでも同じ風景が続いている。
少年は、こんなにきれいな景色を見たのは、はじめてだった。

しばらく辺りを眺めた少年は、今度はすぐそばで咲いている花に顔を近づけてみる。それらはまるで、自分に笑いかけているみたいだ。
少年は胸のあたりに、じわりと何かが広がっていくのを感じた。

その正体は果たして何なのか。

それを確かめるべく、少年はそのまま花をじっと見つめた。
向こうもまた、微笑みを称えながら少年を見つめ返す。

しかし、いくら待っても花が口を開くことはなく、その正体は分からない。

少年は、花の首に手を伸ばし、それを掴んでぐっと上に引き上げる。

花は微笑みを浮かべたまま、事切れてしまった。

少年は何度もその細い首を掴んでは、ぶつりとそれを千切っていく。
一本、二本、三本。
少年の手は止まらなかった。

それに呼応するかのようにして、胸に広がる何かも止まることはなく、どんどんと少年を侵食していった。

そうして黙々と動かしていた手は、しかし。不意にピタリと動きを止めた。

少年と花の隙間を駆け抜けるようにして、風がサァッと吹き抜けたのだ。
その勢いに圧されて、少年は腕をかざしてぎゅっと目をつむる。

風が過ぎ去ったあと、少年は恐る恐るまぶたを開けてうえを見上げた。

そこには、青い鳥がその羽根をいっぱいに広げて、空に吸い込まれていく様が見えた。

少年はじっと空を見つめる。

気づけばその目からは、一筋の涙がこぼれていた。

5/1/2024, 9:28:02 AM