猫宮さと

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《世界に一つだけ》

ポケットから取り出した、銀杏の葉。
今日彼が私の髪に付いてたこの葉を、そっと摘んで取ってくれた。

私はついそれを受け取って、ポケットに入れてしまった。
彼が私の頭に手を伸ばした瞬間が嬉しくて、それを忘れたくなくて。

家に着いてすぐ、私は銀杏の葉を大事に古紙に挟んだ。
そして、上からそっとアイロンで熱を与えつつ押さえる。
銀杏の緑をそのままにするため、丁寧にムラのないように熱を加えて平らにしていく。

そうして綺麗に水気が抜けて厚みが取れた銀杏の葉を、綺麗な紙に乗せて糊付けする。
まだ緑の銀杏の葉によく映える、薄いレモンイエローの紙。
糊が乾いたら、それを透明なシートで包んで上の部分にリボンを付ける。
リボンは、赤。あなたの髪色にとても良く似た、暖かい赤。

出来上がった栞を見て、私は目を細めた。
あの時ほんの少しだけ、彼の指が私の髪に触れた。
この緑が、その嬉しさをそのまま残してくれている。

世界で一つだけの、形になった大事な私の想い出。

9/10/2024, 7:04:49 AM