『やさしい嘘』
「...」
「...」
両者沈黙の時間が続く。
事の発端は俺にある。
彼女のお兄さんの様態が悪くなったことを
お兄さんから連絡を受けお見舞いに行った。
元々体の弱かったお兄さんだが、
いよいよ入院しても難しいと言われた。
また彼女を誘ってお見舞いに来ます。
と言うとお兄さんは焦り、
まだアイツには秘密にしておいてくれと頼まれた。
正直どちらに嘘をつこうか迷った。
どちらにも嘘をつきたくないが、
そうなってしまったらどちらかが必ず傷つく。
例えそれがやさしい嘘だとしても...
その結果、お兄さんの頼みを優先した。
彼女は最後にお見舞いに行ってから
お兄さんと話すことなくお別れになってしまった。
彼女はひたすら泣いていた。
俺の胸を借りずにただ1人で我慢できずに溢れる涙を流して...
だから俺からはかけれる言葉もない。
喋ろうにも罪悪感が口を塞ぐ。
優しい嘘も結局は嘘。
バレてしまえば傷つくことだってあることを俺は
腫れぼったい目をしている彼女を見て自分を責めた。
そんなことをしてもこの場が
収まることが無いとわかってても...
語り部シルヴァ
1/24/2025, 12:14:36 PM