#紅茶の香り
ぐっすん…うっ……うぅ…
部屋からは、お嬢様の泣き声が微かに廊下まで響く。
コンコンコン────。
お嬢様、入りますよ。
私はそう言って、お嬢様の部屋へと入る。
"お嬢様、どうされましたか?"
泣いてるお嬢様に、尋ねた。
"今朝飲もうとした、お父様から貰った紅茶が無いの。
探していたら、どこからか微かに紅茶の香りがしたの。
その方向に向かうと、妹が私の紅茶を飲んでいたの。
そんな事でグズグズ泣くのは良くないと分かっているわ。
だけど、お父様から貰ったたった一つの紅茶でしたもの。"
お嬢様は、必死に声を振り絞り、そう告げた。
"そうでしたか……。
では、私が作りました、紅茶…如何なさいますか?"
"え?"
お嬢様は、キョトンと目を丸める。
"……??私は最近紅茶を1から作るのにハマっておりまして……案外簡単に見えるかもしれませんが、とても難しいんですよ。"
"……で、では頂こうかしら……"
お嬢様は、どことなく嬉しそうに言う。
"お嬢様、こちらでございます。"
私は、お嬢様にそっと紅茶の入ったマグカップを置いた。
"頂くわ。"
お嬢様は、恐る恐る私が作った紅茶を口にする。
すると────。
"何これ……美味しいわ!"
先程は泣いていた、お嬢様の顔が今ではとても眩しい程輝いていた。
その後、お嬢様は幸せそうに紅茶を口にする。
"私、決めたわ!"
お嬢様は、そう言う。
何をですか……??
"紅茶 ではなく、 幸茶"
そして、この世界では紅茶 ではなく、それを飲む事で幸せになれるという噂が広がり、
幸茶と呼ばれるようになった___。
10/27/2023, 3:22:56 PM