“答えは、まだ”
たとえば、偶然に触れ合った手が、妙に高い熱を持つだとか。
たとえば、他意のない笑顔を向けられて、おかしな動悸がするだとか。
たとえば、ただ一緒にいるだけなのに、なぜか呼吸がしづらいだとか。
最近、特定の人物といる時に限って体調が悪かった。そうは言っても、ソレが病院にかかる必要がある類のものではないことは薄々気がついていた。だからこそ、厄介なのだということも。
正しく言うのであれば体調不良ではない。調子が悪いのは身体ではなく、精神の方だった。どこかでボタンをかけちがって、致命的に後戻りができなくなっている。つける薬も飲む薬もありはしない。どんな名医だって、きっと治せやしないソレ。世間では、綺麗な名前でパッケージングされがちだけれど、自分はそうは思わない。
ズキズキと頭が痛む。
一緒にいないときまで具合が悪いなんて重症だ、と、苦く笑う。
考えたくなかった、なにも。
だって、知っているのだ。答えを出して、告げたところで、正解になる見込みなんて欠片もない。絶望的に間違っている。ただ、相手を困らせるだけ。それならば、思考停止した方が幾分もマシだった。同じ誤答でも白紙の方が、マイナスにならないだけずっといい。
どうにも持て余しているこの感情の。答えは、まだ。
9/16/2025, 11:21:45 AM