—亡国の騎士—
「ノルディアという名前を聞いたことはあるか」
裏路地を歩いていた二人の男に問いかけた。
「ノルディア……、どこかで聞いたことがある。お前何か知らないか?」男が隣の男に聞いた。
「うーん。昔滅んだ国が、確かそんな名前だったような気がするが」
「昔か……」
二十年前『ノルディア』という国は、多国からの侵略により滅ぼされた。
時が経ち、人々からは徐々に忘れ去られているようだと分かった。
拳を握りしめる。
「ところでお前さん、見たところ外から来た人間のようだが、どこからやってきたんだ?」
「ノルディアからだ」
そう言い、二人の首を剣で斬り落とした。
俺は、あの戦争の唯一の生き残り。憎悪で心を燃やし、地の底から這い上がってここまできた。
俺にできることは一つしかない。
また『ノルディア』の名を、全世界に響かせる。
それが死んだ皆のためにできる、唯一の恩返しだ。
「まずはアストレイアからだ」
剣を鞘に納め、俺は歩き出した。
お題:失われた響き
11/30/2025, 7:34:21 AM