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『逃れられない』

低い天井に窓のない通路とかアルミの棚や小物で溢れた店内とか。家路についてる人間とかこれから用事が始まる人間とか。視界が人のカタチで煌めいてたり澱んでたり。そういうものに囲まれて、頭がくらくらっとしだしたら、途端に息が難しくなるの。謎の重力で潰された空気から少ない酸素を取り出せなくなって、脳が重く鈍って視界が廻るの。そうなったら、さも平気な顔して慎重かつ優雅に建物や人垣から離れて外に出て、空と風を確認してから情けない息を吸う。

あなたは目に見えないから空気なんて意識しないと言ったけど、私はこんなふうに空気の扱いによく四苦八苦してる。意識しないくらいには馴染んでて、見えなくてもいいくらいには当たり前。そんなものが生きていくには重要で必要で、なのに見えてなければ無に等しいなんて言われちゃう。軽く軽く扱われちゃう。だけど、それを私はそれで正しいとも思うの。

5/23/2024, 3:32:55 PM