マサティ

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染まりゆく部屋

ホームセンターでカーテンを選ぶ。
彼女との同棲が決まった。アパートの契約も済ませた。
新居の為の、初めての買い物だった。
「どれが良いと思う?」
彼女が聞いてくる。
ざっと売場を見渡す。
なんだか、どれも悪くないような気がしてくる。
そもそも、良くないものなんて売場に出さないだろうし。
「これが良いと思うよ」
シンプルな薄緑色の布端を僕は指さす。
彼女はホッとした表情をする。
「良かった。私もそれが良いと思ってたのよ」
その反応に、僕もまたホッとする。
本当は濃紺に魚の柄が入ったカーテンが気になっていたのだ。
でも、それはほんの些細なこと。
いちいち口に出したりしない。
「早めに決められて良かったね」
「私も、新しい生活が始まるなって、やっと実感してきたかも」
彼女が寄り添い、指を絡めてくる。僕も握りかえす。
好きな服とか、カーテンとか、本音を言えばどうでも良いのだ。
本当に大切なものを見据えなければいけない。
君の色に染まっていく。そうゆうこと。

6/22/2024, 7:23:10 AM