Eiraku

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「生き物」


辺りには幾多もの死体が転がっていた。
全て、戦にて戦死した者だ。

「…先生。私はいいので、他の怪我人を先に……。」
「……。」
私は、目の前に差し伸べられた先生の手を横目に、そう言い放った。

先生は暫く私を見つめていた。その瞳のはどこか掴みどころがなく、彼の考えが読めなかった。
先生の手は未だ私に指先が向いている。

「…医者の見習いが死ねば、助かる人も助からなくなるぞ。」

私は暫く先生を見つめた。
辺りを見渡すと、大量の死体。全て、先程まで生きて戦っていた「人間」だ。

私は、血に濡れた手で、彼の手を掴み取った。

11/13/2025, 10:51:16 AM