【冬支度】
北風が山を越えて町に降りてくる頃、二人は古びた小屋の前に並んで立っていた。
屋根の上には去年よりも深く落ち葉が積もり、軒先の薪棚はすっかり空になっている。
「今年ももうそんな時期かー。」
片方がつぶやくと、もう一人は黙って斧を持つ。
乾いた木を割る音が、冷えた空気の中に鋭く響く。
二人でこの小屋を直し始めたのは、いつだったか。
確か3年前だったかな、冬の少し前だった。
町を出てから互いに行き場を失い、偶然のように再会した。
誰も来ない山裾の土地を借り、手探りで暮らしを整えていくうちに言葉よりも確かな絆が芽生えた。
薪を積み上げ、窓の隙間を詰め、湯気の立つ鍋を囲む夜。
「来年も、こうやって準備してるんやろな。」
火に照らされた顔は、どこか遠くを見ていた。
「さあ。まぁ、お前がおったら冬も悪くないわ。」
小さな笑いがこぼれる。
外では雪がちらつき始めていた。
焚き火のぱちぱちという音の向こうに、静かな季節の足音が近づく。
2人は肩を並べ、何も言わずに湯気の向こうを見つめた。
その沈黙には、言葉より深い約束があった――また、この冬を共に越えようという。
11/6/2025, 1:26:50 PM