『鏡の中の自分』
鏡に映る自分の顔が、母にそっくりだと思うようになった。人から似ていると言われても「そりゃあ、親子だからね。」程度にしか思っていなかったのに、双子かと思えるほど似てきた。鏡の向こうにいる私が、「親子なんだよ。あの人と。」といろんなトーンで何度も語りかけてくる。左頬に、母と同じ位置・同じ大きさのシミがある。「親子だから?。」と鏡に問いかけると、「そうだよ。遺伝だよ。」と辛そうにあっちの私が答える。私は、耐えられなくなりシミを取った。左鼻筋の少し盛りあがったホクロは、弟と同じ。母が、「姉弟の証だよね。」と嬉しそうに言っていたけど、それも耐えられなくて取った。鏡の中の私はそれでも母とそっくりなのだけど、気持ちが楽になったような感じがする。にっこりと笑った顔が映る鏡に、「あの人より笑顔が綺麗だよ。」と言えたよ。やっと鏡の中の自分を好きになれた。
11/3/2024, 1:39:37 PM