休職(テーマ 何気ないふり)
悪いけど、これをお願い。
これも。
これも。
あれこれあって悪いけど。
あなたは職位も高いし、求められている責任も大きいから。
家に帰ると、家事と育児を手伝わないことを妻になじられる。
やれ、近所の○○さんの旦那さんは料理してくれる。
プレゼントをくれた。
子どもは授業参観に来ることを期待しているが、その日は仕事が入っている。
どうしたらよいのか。
きつく言われても、泣かれても、顔色一つ変えない、作り笑顔だけはうまくなる。
はあ。はあ。そうですか。
分かりました。
家庭と仕事の板挟みになって数年。
上司に相談しても、上司も同じようなものだ。
妻の悲鳴と怒声を、子どもの泣き声をワタシが聞き流すように。
ワタシの悲鳴も上司に聞き流される。
そうして、大量の仕事を、家庭と健康をを犠牲にして回していく。
そこには何もない。
私の心はない。
ただ、顧客には笑顔を見せているだけだ。
そして、ある朝、体が動かなくなる。
声が出なくなる。
文字が読めなくなる。
胃が痛くてたまらなくなる。
何もないフリ、優秀なフリ、仕事ができるフリ。
嘘で塗り込められたワタシは、ついに機能しなくなった。
いっそ、心がなくて、本当に『何でもない』ならよかったのかもしれない。
精神科でもらった薬で、心を矯正する。
字が読めるようになる。
胃が痛くなくなる。
体が動くようになる。
これで、何気ないフリをして、仕事に戻れる。
だが、結局、授業参観には行けないのだ。
ああ、息子の悲しい心が分かるから、自分も同じ思いを子どもの頃にしたから、だから余計に、○○が痛いのだ。
薬で胃は痛くなくなるが、○○が痛むのは止まらない。
やがて薬の量は増える。
何気ないフリはもう限界だ。
ワタシという機械は、この環境ではもう満足に動かないのだ。
3/31/2024, 8:50:32 AM