星明かりを見上げていた。
春めかしいなま暖かさが肌をすべり抜ける。
木々に萌える若葉達のざわめきが鼓膜を揺らめかせる。
視界の端に灯る街灯を掌で隠し、目に入れる光を夜空の星々だけに限定する。
ちかりちかり、ゆらりゆらり、ぱちりぱちり、きらりきらり。すべての星が、気の赴くままに瞬く。
――するときみは、どの星もながめるのが好きになるよ。
――人間はみんな、ちがった目で星を見てるんだ。
ふと、過る。想像上の柔らかい声が紡ぎ上げる、幼い日の記憶。
きみの家は、どこだろうか。
波風立たない、穏やかな感情のまま。
ふ、と笑みを引くため息がこぼれた。
【星明かり】
(引用:星の王子さま)
4/20/2025, 3:47:48 PM